番犬の役目

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「慎さん、何か欲しいものはないですか!」 「欲しいもの?」 「ほら、昨日誕生日だったなんて知らなかったもんで」 「ああ……別にそんなの」 「要らないとか言わないでくださいよ、俺が贈りたいんです!」 前屈みに身体を乗り出してそう言うと、慎さんが頬を引き攣らせて引き気味になる。 あのおっさん相手には営業スマイルだろうと引かずに相手してたのに。 きっとあの薔薇だって、にこやかに「ありがとうございます」っつって喜んで見せたのだろうと思うと、なんだか悔しい。 なんで俺にはそんな顔するんだ、と拗ねてしまいたくなるが下手に駄々をこねて欲しいものを聞き出せなくなっても困る。 ここは我慢、と慎さんの返事を待っていると彼は眉根を寄せ乍らも「ん……」と考える仕草を見せた。
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