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ふ、と慎さんの表情が緩む。
何かを思いついたような顔だった。
「じゃあ、一つだけ。ずっと欲しいものがあるんですけど、中々手に入れられなくて」
「はい、なんすか! 何でも言ってください!」
中々手に入れられないもの、と聞いて実は一瞬ビビったが勢いで言ってしまった。
一度吐いた言葉を引込めるわけにもいかないと、覚悟を決める。
なんだ、高価なものなんだろうか、それともレアなものという意味だろうか。
多少の貯金はあったはずだが、と通帳の残高を思い出していると。
「この先の公園の近くの細い路地に、評判のいいパン屋があって」
かくん、と勢いづいていた肩の力が抜けるほど、拍子抜けした。
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