例えるなら、水のような

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「何言ってんですかそれだけですよ」 「違うな。お前が煽るから」 「そうっすよ、慎さんが煽るから」 どういうわけか、突然タッグを組んだ佑さんと陽介さんに白い目で見られた。 陽介さんに至っては、若干恨めしそうに見えるのはなぜだ。 「は? なんでいきなり僕のせい?」 「お前があのおっさんの前でこいつの手綱引くから」 「だから……意味がわからんと」 言うとるだろうが。 なんなんだ。 僕がいつ、番犬の手綱を引いたって? わざわざ引かなくても、勝手に来るのはこの人じゃないか。 「ああいう、誘うような表情は誰も見てないとこで……」 「お前は調子に乗って毎回パーカー着てくんのやめろ」 パシン、と頭を叩かれても、へらへらと笑っている陽介さんは嬉しそうというよりも鼻の下が伸びている。 僕のわからないところで進む会話が腹立たしくて、「ちっ」と鳴らした舌打ちが案外大きく響いた。
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