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『随分、人好きしそうな彼だね』
『そうですね。妙な下心がないので付き合いやすい方だと思いますよ』
正確には、下心があっても丸見えになりそうなヤツだから。
アンタみたいに気色悪く人の腹探って近づこうとはしないから、いい。
という本音はぐっと腹の底に押し込めて、精一杯笑って見せ、掴まれた腕を引く。
然程強く掴まれているわけではないが、わざとらしく指先に力が込められていて、腕、手首、手のひらとまるで撫でられているようだった。
ぞわわ、と鳥肌が立ったのは悟られたくはない。
アカラサマに嫌悪感を丸出しにして、この男の前で接客スタイルを乱されるのは絶対嫌だ。
手のひらを通過する瞬間、かり、と男の爪が肌を掻き、指先を恭しく掴んで掲げる。
『もう少し、君と話したいのだけど』
……なんだこれ。
おっさんが王子様でも気取ろうってのか。
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