例えるなら、水のような

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大体あの日からだ、あのおっさんのボディタッチがやたらと増えたのは。 そう思うと番犬の存在が忌々しいが、いそいそと嬉しそうに店に顔を出すあの邪気の無さを目の当たりにすると、余りくどくどと言えなくなるから不思議だ。 かと言って、僕が煽っただのなんだのと佑さんと二人して言われれば苛つくけど。 隣で美味そうにパンを齧る彼に目を向けると、すぐに視線に気づいて嬉しそうに破顔する。 「美味いですか?」 「塩パンは微妙だった」 そう言うと、たちまちしょげて眉尻を下げるのが可笑しい。 本当に、よく表情が変わる奴だ。 「イチジクのは、美味しかったですよ」 陽介さんのパーカーの紐が片方だけ襟のフードに引っかかっていて、「またか」と指で軽く引っ張って直してやると、真っ赤な顔で鼻の下を伸ばした。 うん。 こいつも大概気色悪いかもしれない。
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