例えるなら、水のような

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朝日が差し込んで明るいグレーを見せていたコンクリートの階段に、ふっと濃い影が差す。 顔を上げると梶さんがすぐ傍で、口角を上げて見下ろしていた。 穏やかな微笑み、だと思う。 だけど、ぞくりとしたものが背筋を走る。 それは、僕が彼に対して好意を持てていないからだけのことだと、思う。 「まだ開店準備には早いだろう?」 「色々とやることは多いんですよ」 「もう何度も誘ってはすげなく断られてる。朝食くらい応じてくれてもいいだろう。そのカフェのフレンチトーストが美味くてね」 フレンチトースト!!!! その言葉だけでぐらりと来る僕は馬鹿だ。 勿論、応じるわけはないけど。 「すみません、店以外ではお客様とは会わないことにしているんです」
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