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あ、しまった。
それなら店で珈琲でも、とか言われそうな気がする。
「それじゃ」
慌てて先手を打って会釈をすると、階段を駆け下りた。
メーターボックスに箒と結局ゴミを集めることもなく用無しで終わった塵取りを放り込んで、振り向く。
「……っ!」
驚いて、ひゅっと息を飲みこんだ。
薄暗い中で、ちょうどこの半地下まで降りて来た梶さんが目の前に立っていた。
「……梶さん」
不気味に感じるのは、このおっさんがちょっとしつこくて辟易していたからというのと、逆光で表情に色濃く影が差しているからだ。
必要以上に怯える必要はない、と、驚いて早鐘を打つ心臓に言い聞かせて無理やり唇で笑みを象った。
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