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いざとなったら、脛かも一つ上段の男の急所狙って蹴っ飛ばして店の中に逃げ込んでやろうと、身構えながら扉の中に滑り込める位置まで身体を横に滑らせる。
「私はいつも本気で口説いているつもりだけどね。それに、不公平じゃないか? あの男とは最近よく外で会ってるじゃないか」
「……いいかげんにしてください」
あの男とは陽介さんのことに間違いはなく……土曜の道場通いにお伴で付いて来ているところを目撃されたに違いない。
他には何の心辺りもないのだから。
面倒くさいやりとりに、先にしびれを切らしてしまったのは僕の方だった。
「余り度を超すと出入り禁止にしますよ。失礼します」
小さく扉を開けてギリギリで店内に滑り込む。
それさえできれば、例え邪魔されても扉を閉めるくらいは簡単だと思ったのだ。
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