例えるなら、水のような

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「こないだネットで良さそうなパン屋見つけて、今日行って見たんです」 「へえ、美味そう」 陽介さんが袋の中身を僕に見せながらそれを差し出す。 中にはフランスパンの生地らしい丸いパン、デニッシュ系などがそれぞれ薄いビニールに包まれて幾つか入っていた。 「この丸いのがドライイチジクが入ってて、後は胡桃とレーズン。デニッシュのはカスタードクリームとリンゴと……あと、この上の柔らかそうなのが塩パン」 「塩パン?」 「なんか一番人気でしたよ」 とりあえず、どれも美味そうで目移りしてしまう。 これだけ香りが強いってことは、焼き立てのがあるんだろう。 多分一番上の塩パンか。 ビニールの口が敢えて開けてある。 「良かったら、食べませんか」 ホカホカのパン以上に、温かそうな笑顔を向けられる。 こんな笑い方ができるんだから、さぞや女にモテるだろうになんで僕なのか。
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