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「つれないね、君は」
男の声に、顔を上げればそれこそ強引にキスでもされそうで恐ろしくて上げられなかった。
密着した部分がやけに暑苦しく、反面背筋にひやりとした汗が流れる。
女としては壊滅的に足りない洗濯板のような胸だが、さすがにまともに触れたらバレる。……多分。
落ち着け。
ここまで密着してしまったら、思うように力も入れられない。
至近距離で抱き着かれたらどうするんだった?
掌底で顎を下から……若しくは、相手の小指を取れれば思い切り関節を逆方向。
それから。
「僕は梶さんに何か期待させるような態度を取りましたか? だとしたら大変申し訳ないが、僕は貴方とは」
先生に教わったことを頭の中で何度も反芻しながら、だがこんな時に限って手に全く力が入らない。
「いや、実はずっと気になってるんだけどね」
腰に触れる手が、さわ、とベルトの少し上、くびれの辺りを撫でる。
「……君、ほんとはどっちなのかなって」
そのセリフに、頭が真っ白になった。
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