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ぐ、と奥歯を噛みしめる。
怖い、大丈夫、落ち着け。
逃げなければ、早く。
女だとばれてはいけない、男の前で女であってはいけない。
「おい? 君、何もそんなに……」
怯えることはないだろう?
そう言いたげな訝しい表情の男と目が合う。
まずい、変だと思われた?
焦りだけが先走り、冷静さを見失う。
「離せって言ってるだろ!」
男の腕の中ですぐにも逃げ出そうともがくが、掴まれた手首はびくともしない。
腰にある手が、宥めるように背中を擦るが、おとなしくなってたまるかと相手を睨みつけた。
女とバレたら。
いや、この人はゲイなんだから、バレたとしても安全なのか?
いや、抑々それを信じていいのか?
「慎くん?」
つ、と男の腕が脇腹を辿って上がり胸付近に近づいた時、ひっと上がりそうな悲鳴を飲みこんだ。
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