例えるなら、水のような-2

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「よ……」 陽介さん、と声は続かなくて、暫し茫然と上を見上げる。 彼の目が僕と僕の背後を交互に見て、それからぎりっと眉を吊り上げた。 今にも飛び掛かりそうな勢いに、その腕に抱きついて捕まえる。 いや、捕まえたというか足元がおぼつかなくて掴まった、が正しいかもしれない。 どうして、こんな朝から彼が来たんだろうか、とか。 まだ約束のパン屋に並ぶには早すぎる時間なのに、とか、疑問ばかりであるが。 「おせぇよ番犬」 は、と安堵したら気が抜けた。 「え、すんませ……あ、えっ?!」 膝をついた覚えはない。 そこで、ぷつっと意識が飛んだ。
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