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決して最初から、僕は男に成りすましていたわけじゃない。
女子高だった為校内では王子様扱いで結構慕われていたし、バレンタインには食べきれないくらいのチョコレートが集まったりもしたけれど、それとは別に、皆他校に彼氏がいたり好きな人がいたりした。
あくまで僕は、女だった。
ショートカットで背も女にしてはかなり高くて、学校指定のジャージなんか着ていたらそれこそ男にしか見えなかっただろうが、あくまで女だった。
だけど、ある夜を境に、僕は男の形しかしなくなった。
外では一人称を「僕」に変えた。
学校以外の場所では、男になりきった。
心配する家族の手前、なんとか高校、短大と卒業していよいよ女である必要がなくなった時。
僕は年の離れた姉の元旦那にバーで働かせてくれと頼んだ。
彼はあの夜家に遊びに来ていて、帰って来た僕の姿を見ていたから、何があったのかを僕が口を閉ざしたままでも察していた。
だから黙って、僕をこの店に置いてくれた。
彼が察してくれたであろうことが、事実と少し違うだろうことを僕は予測していたけれど、彼が何も言わないから僕も何も言わなかった。
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