あなたに、触れたい

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翔子に振られたからといって、決して自棄になっているわけでもない。 相手が慎さんってとこで逆にハードルが上がってるのは間違いないし、慎さんはきっと女の子が好きだ。 いやきっとっていうか、男なんだしゲイじゃないというんだから当然だ。 慎さんの女性客に対する目はめちゃくちゃ優しいし、俺にもそんな目を一度でいいから向けて欲しいと何度願ったかわからない。 アカリちゃんは、今まで俺が付き合ったタイプとはちょっと違って小柄で控えめで(翔子は割と長身だったし気が強かった) でも、だ。男と恋愛するよりはアリなはずだ。 それなのに。 「なーんでかなー」 欠けた月が随分と高いとこに上っていて、澄んだ夜の空気の中でいつもより煌々として見えて、答えは見えないままどうしても今、慎さんに会いたくなった。 なんでこんな夜に限って、定休日なんだろうか。
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