あなたに、触れたい

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そうか、ゴミの日か。 と気付いた途端、早足になる。 もう店は目の前で、ゴミ収集車は、まだ来てない。 慎さんのことだから、ゴミ回収の時間ギリギリまで寝てて、今から出すとこくらいかもしれない。 昨夜からずっと募っていた「会いたい」という欲求が爆発したのか、こんな朝早くから迷惑かもしれないなんて思考は頭の隅に追いやられる。 完全に緩みきっていた顔が緊張を取り戻したのは、店の前の階段を降りようとした時だった。 見下ろした店先では、半開きになったメーターボックスから箒が床に落ち その柄が引っかかって、店の扉が僅かに開いていた。 まるで慌てていて閉めそこなったみたいな、乱雑な様子に何か嫌な予感が頭を掠める。 「……!」 「……っ」 言い争うような声が聞こえた気がして、慌てて階段を駆け下りた。
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