あなたに、触れたい

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ざわざわと騒がしい面子の中で、漸く解散の雰囲気が流れ始めた頃、俺と浩平の間に座っていた女が束の間席を立った。 その隙に浩平が此方に声をかけてくる。 「この後、ダーツバーな」 わかってるよ聞いてたよ。 だが俺は、明日大事なミッションがあるんだよ。 「俺は帰るからな。明日は慎さんの為にパン屋に並ばないとダメなんだよ」 多分、並ぶのは昼の三時からでも間に合うだろうって話だったけど。 気が進まない合コンから早く逃げ出したくて、つい口実に使ってしまった。 「……お前さあ」 「なんだよ」 「不毛な恋してないで、現実の女を見ろって」 そう言って、今しがた席を立った女が座っていた椅子の座面を叩いた。 「脈ありそうだったじゃん」 「いいって。俺は数合わせで参加するだけだって言っただろ」
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