あなたに、触れたい

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慎さんが女だと気が付いてから、あの男に気付かれないように平静を装うのに精いっぱいで、そして今はその事をどう受け止めるかで頭の中はずっと混乱している。 慎さんが女性であることに、なぜか手離しで喜ばない自分が不思議で。 自分の感情がどうなってるのか全く不明だ。 当然、嫌になったかなんてことはなく。 ただただ、どうすればいいのか。 思考回路が縦横無尽に飛び交って、まるで迷路のようだ。 一つだけ、自分がこれから取るべき行動を示してくれるのは、目の前で手を震わせながらもじっと此方を見つめる、警戒心丸出しの猫みたいな綺麗な人。 「……怖くない」 「え、ほんとに?」 まるで自分自身に確かめるように、こくりと深く頷いて彼女は「はい」と答えてくれた。 「……じゃあ、手」 「え?」 少しずつ、ちょっとずつ。 彼女を怖がらせないように、彼女の身体の震えを止めること。 今はそれが、最優先。 「……握りますか。良かったら、震えが収まるまで」
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