474人が本棚に入れています
本棚に追加
「……で、パン屋に並ぶのもまだ早すぎるってわかってたんですけど。目が覚めちまったし、起きてたらいいな、と思って」
「寝てたらどうする気で?」
「どうとでもなるかな、と。ここら辺店多いし」
昨夜は、どうして、なんで慎さんなんだろうと考えていたけれど。
今はなんとなくわかる。
男でも女でも、関係なく好きになってしまった人だから、例え乗り越えたと思っていた壁が本当は全く存在しないものだったとしても関係ない。
話しているうちに、少しずつ血色の戻った頬はうっすらと桃色を帯びている。
透き通るような白い肌に、少し憂いた瞳がなんともいえず艶っぽい。
手の中で少し体温を取り戻した指先を、逃がしたくなくてつい力を込めてしまった。
訝しく眉根を寄せる彼女に、あと少し、もう少し近づいても構わないだろうかと欲求が押し寄せる。
「……あ、あの」
「なんです?」
本当は、今すぐ聞いてしまいたかった。
最初のコメントを投稿しよう!