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握った手の中にある、壊れ物みたいに繊細な指先にゆっくりと顔を寄せ。
小さな爪の、少し横に唇で触れた。
逃げなかったから、つい二回。
キスなんて初めてってわけでもないのに
ましてや唇でもなくたかが指先なのに
初めてだと感じるくらいに、鼓動がうるさい。
顔を上げると驚いたように此方を見下ろしていたけれど、嫌がってるようには少しも見えなくてつい笑ってしまえば。
ぼんっと音がしそうなくらいに、真っ赤になった慎さんを見ることができた。
「なっ……」
ぱくぱく、と口を開けてそれ以上を音が発することができなくなってしまったらしい。
その様子に、俺の方が少し驚かされる。
いや、期待を持たされる。
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