あなたに、触れたい

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「あ……えー、っとね。良かったら、どっか寄らない? まだ帰るには少し早い時間だし……」 する、と腕に絡んでいた手がほどけて、少し臆したような控えめの笑顔にしまったと後悔した。 怖い顔をしたつもりはないけど、本当に帰るつもりだったからどこかに寄ることが前提のセリフに驚いてしまっただけで。 「ああ、いや。ごめんな。明日は用があるし、今日は帰るわ」 「そ、そっか。残念……」 「でなけりゃ俺もダーツバー行ってるって」 「あ、ほんとそうだよね!」 二人、微妙に乾いた笑いだがどうにかその場が取り繕えた、微妙なタイミングだった。 俺の携帯が鳴りだして、見ると浩平の名前がディスプレイに表示されている。 なんか、ちょっと。 ピンと来てしまったかもしれない。 「……なんだよ」 『あ、陽介? アカリちゃんと合流できたか?』 「やっぱお前かあ!」 やっぱり、お前の差し金か! と言ってやりたかったのをなんとか堪えたのは、目の前に浩平の策略で寄越されて来た彼女がいるからだ。
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