あなたに、触れたい

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『せっかくなんだからもう一軒どこか連れてってやれば?』 「あのなぁ。帰るよ、今そう話してたとこだよ」 『ふぅん……じゃあちゃんと送ってやれよ。家まで』 「えっ、なんで」 なんでだよ。 駅までで十分だろ、と思うけど。自分の彼女ならともかく。 ああ、でも。 慎さんなら、女の子にやたらと優しいから、送るのが当たり前だと言いそうな気がする。 『アカリちゃんとこ、駅から遠いらしいからさ。道も暗いんだって。責任持って送ってやれよ』 微妙に揺れてたとこに、追い打ちみたいにそう言われてブツっと通話は切れた。 「あ……あの。すみません、なんか……」 電話の相手が誰なのか察しているのだろう、彼女は小さい身体をなお一層小さくして立ち竦んでいる。 「いや、いいよ。家まで送るよ」 何か釈然としないまま、しかしこの流れで「じゃあ」と駅で別れるのも気が引けた。 ……言い訳をするなら、慎さんなら本当に、送るのが当たり前だと言いそうな気がしたからで。 アカリちゃんを家に送る、というただそれだけの行為で、慎さんに対しての言い訳まで頭で考えてしまう俺ってどんだけのめり込んでるんだろう。
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