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「それじゃ、もう帰りますよ」
「はいっ」
さっきは渋っていたのが、次の機会という不確定ではあるが約束を得て機嫌を直したのだろう。
随分と素直にベンチから立ち上がった、その時だった。
「あれっ、陽介か?」
不意に声をかけられた。
その人物は陽介さんの向こう側にいて、僕からは見えていないが、確かに聞き覚えのある声だ。
しかしながら、随分久しぶりでもある。
「浩平? こんなとこで何してんだ」
と、振り向いた陽介さんの背中から、僕も顔を覗かせて会釈する。
「こんにちは」
彼からも、僕は陽介さんの影になっていて今まで見えていなかったんだろう。
目が合った時は、少し驚いたような顔をされたが、次の瞬間、どういうわけか少し眉を顰められた。
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