475人が本棚に入れています
本棚に追加
待て。
待て待てちょっと待て。
たかが指先に、きっ、キスされたくらいで急に意識するとか簡単すぎるだろう。
ヤキモチを妬かれて嬉しいとか、誰だお前。
今まで通り『気持ち悪い』でいいじゃないか。
顔面は出来るだけ平静を装い真っすぐ前を向いて歩いているが、内心は冷汗だらだらだった。
自分の感情なのに理解が追い付かない。
理論立てて考えて、否定しようと思うのにそれができない。
『気持ち悪い』と思えない自分が、これはただ気を許しすぎてるとかいう問題ではない気がして、このままではマズいような、焦燥感に掻き立てられる。
だが、次の陽介さんの調子にのった一言で我に返ることができた。
「まあ、おかげで慎さんとデートできるからよしとしますけど」
「デートじゃありません。何を言ってるんですか」
おかげでそれ以上深く考えずにすんだのだが、これが良かったのか悪かったのか。
とにかくこいつがお調子者でいてくれる方が、僕は僕らしくいられるらしい。
最初のコメントを投稿しよう!