月と太陽

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待て。 待て待てちょっと待て。 たかが指先に、きっ、キスされたくらいで急に意識するとか簡単すぎるだろう。 ヤキモチを妬かれて嬉しいとか、誰だお前。 今まで通り『気持ち悪い』でいいじゃないか。 顔面は出来るだけ平静を装い真っすぐ前を向いて歩いているが、内心は冷汗だらだらだった。 自分の感情なのに理解が追い付かない。 理論立てて考えて、否定しようと思うのにそれができない。 『気持ち悪い』と思えない自分が、これはただ気を許しすぎてるとかいう問題ではない気がして、このままではマズいような、焦燥感に掻き立てられる。 だが、次の陽介さんの調子にのった一言で我に返ることができた。 「まあ、おかげで慎さんとデートできるからよしとしますけど」 「デートじゃありません。何を言ってるんですか」 おかげでそれ以上深く考えずにすんだのだが、これが良かったのか悪かったのか。 とにかくこいつがお調子者でいてくれる方が、僕は僕らしくいられるらしい。
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