月と太陽-2

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「アカリちゃん、家まで送ったんだろうが。どうだったんだよ」 「ちょっ、浩平、ちょっと黙れ」 聞きたくもないのに、耳に流れてくる会話。 慌てた陽介さんの様子が、余計に苛立ちを募らせる。 胸を掻きむしりたくなるような、衝動をどうすればいいのかわからない。 「あの子、一人暮らしだしなー。上手いことやりやがって」 「家まで送れって言ったのお前だろうが!」 「でも送ったんだろ?」 「……へえ」 二人の会話に割り込んだ僕の声は、それはそれは低かった。 「ちょっ、慎さん、違いますからね?!」 「何がです? 昨日は合コン行かれてたんですね。お疲れなのに、付き合わせてしまって申し訳ない」 「それは数合わせで仕方なく……それに帰りが一緒になった子を送ったのは確かだけど、別に何も」 「送って当然のことです。何をそんなに慌ててるんですか」 自分が何を言ってるのか、自分でもよくわからないまま平静を装った。 今目の前で慌てている男に対して、湧き上がる感情を見せていいはずがない。 この感情に、わかりやすい名前が付いているのは知っている。 だけどそれを、絶対に認めたくないし悟られたくなかった。
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