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何を言えば、何て言えば
この感情を悟られずに済むだろう。
浩平さんにも変に誤解をされてはいけない。
そればかりを考えていて、僕は冷静ではなかったし冷静じゃない自分に狼狽え早くこの場から立ち去りたかった。
だから、この時彼が、どんな表情をしていたのか僕は見ないままだった。
「上手くいくといいですね、その彼女と」
こく、と陽介さんの喉仏が上下に動いたのだけは、見たけれど。
すぐに斜め後ろに見える浩平さんに笑顔で会釈して
「それじゃあ、僕は店がありますのでこれで」
と背中を向けてしまった。
「慎さんっ? 待ってくださいよ!」
誰が、待つか。
早足で僕は店までの道を戻った。
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