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そうか。
慎さんは、俺が男を好きになったなんて同僚に知られたら困るだろうと思って、気にしてくれていたのか。
気付くと少し、頭の中に冷静さを取り戻すとっかかりができる。
それでもすぐには止まれなくて、どころか余計に焦がれるような苦しさが胸に生まれる。
気遣ってくれていたのだ。
だけど、俺はそんな気遣いはいらないから、なかったことにしないでほしい。
わかってほしい。
「確かに女の子送ったけど、それだけでなんもしてないし当然家にも上がってませんし、なんならお月様見て慎さんのことで頭がいっぱいでしたよ!」
「は? え、月? なんで」
「仕方ないじゃないですか、綺麗な月だったんです!」
深夜にぽっかり、随分高い所から
満月じゃない、少し欠けた所がバーテンダーじゃない時の愛想のない慎さんみたいで
どうしても会いたくなった、昨日の夜を思い出す。
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