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「別に、なんすか」
「いっ、言い訳を聞くようなことでも……それに怒ってるわけでも……」
「ほんとに?嫌いになってないですか」
「……深夜に女の子をほったらかして帰る方が軽蔑する」
しどろもどろとした答えでも、怒っていないと知ってなんだかほっこりと心の真ん中があたたかくなる。
彼女は何故だかバツの悪そうな様子で、ちらりと此方を見上げてすぐに目を逸らしてしまう。
恥ずかしがっているようで可愛らしくて、つい口元が緩んだ。
「うそつけー。めっちゃ不機嫌だったくせに」
その時、すっかり忘れていた外野からまるで野次のような揶揄いを含んだ声が飛んで来る。
「店戻って来た時、ものすげー不機嫌な面してたくせに」
ニヤニヤと佑さんが笑いながら俺たちの方を見ていてえらく楽しそうだ。
っていうか。
え? あれ。
慎さんはてっきり、何でもない顔をしてここへ戻ってきたのだと思っていたが。
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