触れてはならない、禁断の果実

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同意して欲しいのだろうか。 確かに、慎さんが綺麗な人だということには何の異論もないが。 「話してみると、結構面白い人だよ。人間味あるし」 緊張する、という言葉が、なんとなく「自分たちとは違う人」と一線を引いたものに聞こえて、ついそんなことを言ってしまった。 「そうなんだ? 陽介くん、よく来るの?」 「うん、俺はしょっちゅう」 あああ。 こんなこと言って、慎さんのファンが増えたら増えたで俺はまたやきもきしなきゃならんのに。 「へえ……じゃあ、私も来ようかな。……カクテル美味しいし」 「ああ、ここ女の子の一人客もちょこちょこ来るから、入りやすいと思うよ」 アカリちゃんも慎さんの虜になってしまったか……。 そう気づいても「来るな」というわけにもいかない。 店の売上にもつながるし、仕方ないと脳内でそう言い聞かせていたのだが、アカリちゃんの笑顔が一瞬ピキッと固まった。
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