触れてはならない、禁断の果実

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ふと、アカリちゃんの足が止まった。 「どうかした?」 「ううん、ちょっとびっくりしただけ」 促すように顎をしゃくってから先に歩き出すと、ちゃんとヒールの足音がついてくる。 逸る気持ちを煽るように、冷たい追い風が吹いた。 「そっか、前も言ってたもんね。好きな人のためにパンを買いに行くって」 「あ、そういや言ったっけ?」 「聞いたよ。付き合ってるわけじゃないの?」 「それは、まだだけど」 まだ。 っていう言葉の使い方は適切じゃないかもしれないが、いずれはそうなると思っていたいから敢えて使ってみる。 「でも、めちゃくちゃ好きだ」 「……もしかして、この後会いに行くの?」 「え」 「だって、なんだかすごく急いでるから……そうなのかなって」
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