触れてはならない、禁断の果実

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今までだって堂々と、迷惑はかけたくないから営業中はアカラサマな態度は避けていたけど。 慎さんが好きだって、態度には出してたつもりだった。 だけどその全部が、余りにも綺麗に何もなかった出来事のように処理されてしまった気がする。 伝わらなかった? そういえば、「好き」だと言葉にしたのは最初の一度きりかもしれない。 足りなかっただろうか。 だから、浩平の言い回しをそのまま全部鵜呑みにして、俺とアカリちゃんが昨夜どうにかなったように信じたのだろうか。 平気な顔をされたのもショックだが、気持ちが伝わってなかったことの方がショックだった。 「……っくそ!」 パン!と両手で膝を叩いて乾いた音を鳴らす。 へこんでても仕方がない。 伝わってなかったのなら、反省すればいいのだ。 もっと言葉にするべきだったんだ。 「追っかける!」 「俺も行く」 「は?! ややこしくするつもりならついてくんな!」 気を取り直して立ち上がり、店へと急ぐ。 浩平はお構いなしに後ろを付いて来ていたが、俺も構う余裕はなくてそれ以上何も言わなかった。
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