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「あれ、いらっしゃいませ。来てくださったんですか」
店の奥から出て来た慎さんの反応は、やっぱり思った通りだった。
わかっちゃいたけど、本当に何事もなかったかの様子にまたしてもガンと頭を殴られたような衝撃だ。
「だって、さっさと帰っちゃうから……」
「店があるから、と言ったじゃないですか。来てくださってありがとうございます。夕食の時間ですが、あまりしっかりした料理はうちでは出ませんけど良いんですか?」
バーテンダーとしての、研ぎ澄まされた刃物みたいな、彼女がいつも磨いているクリスタルグラスみたいな綺麗な微笑みだった。
表情一つ、動作一つで
俺はいつもこの人に釘付けにさせられて、今日は立てつづけに衝撃を食らわされている。
俺がなんで追いかけて来たのか。
尋ねてすらくれないのは、どうしてだ。
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