触れてはならない、禁断の果実

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女性二人がこの店を気に入った様子で、結構な長い時間を浪費したと思う。 「浪費」と思ってしまうのは、単に今夜が金曜日で、いつもならカウンターに座り、慎さんの仕事ぶりを眺め過ぎて時折冷たい目で見られつつ閉店を待つ、俺にとったら大切な時間であったからで。 それをいくらなんでもストレートに言葉にするわけにも顔に出すわけにも行かず、時間は日付を越えようとしていた。 「慎さん!」 会計を済ませ、三人が店の外に出たその時、俺は一人だけ扉をくぐらずにカウンターの方へ取って返す。 今日は他にもちらちらと客があり殆ど話せないままで我慢できなかったし、この後のことを思うとそのまま帰るわけにもいかなかった。 「どうしました? 忘れ物ですか」 「いえ、そうじゃなくて」 戻ってきて、何を言うつもりだったのか。 言いたいことが色々ありすぎてまとまらなくて、言葉が出ない。
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