触れてはならない、禁断の果実-2

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きゅっと唇を真一文字に結んで、覚悟を決めたみたいに閉じられた瞼の先で、長い睫毛が震えている。 それで最後のブレーキも利かなくなった。 首の後ろを支える手に少しでも抵抗を感じたら止まらなければと、頭の隅にかろうじて引っかかっているけれど、それが役に立つか自信はない。 どくどくどく。 激しい鼓動の音を聞きながら、上半身を屈めて近づいた。 唇同士が触れる寸前、慎さんが緊張のあまり擦れた声を出す。 「……最低だな」 「え?」 「男同士で、キスできるなんて。最低に趣味が悪い」 どくん、と一際大きく、鼓動が跳ねた。 そうだ、慎さんは俺が秘密に気付いていることを、知らない。 「嫌、ですか」 「……そっちこそ」 「俺は」 このまま男同士としてキスをして、後で慎さんが知ったらどう思うだろう。 俺は彼女を、騙すことになるんだろうか。
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