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唾液にまみれて滑りのよくなった唇がこすれ合って、心地よさに恍惚とする。
柔かくてあたたかくて、気持ちよい。
舌を絡めることに慣れてない様子に、益々身体が熱くなった。
無理だ。
止めろって言われても、無理。
ほんとに嫌なら、噛みつくなりなんなりしてくださ……。
「いっ!!」
突如、口の中でガリッという音がして同時に鉄のような味が広がり、陶酔しきっていた意識が現実に引き戻される。
舌先に走った激痛に、慌てて彼女の唇と首筋を解放した。
いってぇえええええ!
噛まれた!
おもっきし噛まれた!
口を片手で押さえて前屈みになる。
声も出せないくらいの痛みを地団駄を踏んで逃がしていると、息も絶え絶えといった様子の慎さんの声が聞こえた。
「くっ、苦しいって、言ってるだろう、いいかげんにしろ!」
見上げると、涙目で顔も真っ赤な慎さんが般若のような表情を浮かべて肩で息をしていた。
やべえ。
調子に乗りすぎた。
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