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いつのまに絆されたのか絡め取られたのか。
全開で気持ちをぶつけられた衝撃で少しずつ侵食されたのかもしれない。
半分走って戻ってきたのだと聞いて、何もそこまでしなくてもとつい可愛くない言葉を返してしまった僕に、彼は笑った。
「俺が会いたかったし」
その言葉に、ぎゅうっと胸が締め付けられて、なぜだか無性に、泣きたくなった。
本能だ。
この、抱えたままにするには苦しい何かの感情を、落ち着かせるには近づいて体温を感じるしかないのだと、本能が知っていた。
あの距離で体温を感じたいのは、佑さんではなくて。
陽介さんに近づいた時、自分はどう感じるのか、確かめたい。
結果、僕は自分から、陽介さんに近づいた。
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