452人が本棚に入れています
本棚に追加
逃げ出したいのに、目で捉えられて動けない。
益々、頭は混乱し戸惑った。
なんで急に、一気にそこまで進まなければいけない事態になったのか。
これまで気持ちはしつこいくらいに隠すことなく伝えられていた。
それはもう、こっちが疲労を感じるくらいに。
だけどこんな「触れ方」を望まれることはなかったから、なぜ急に、という気持ちが拭えない。
しかし急だと思ってしまうのは、もしかすると僕だけの感覚であるのかもしれないと、ふと思った。
彼がずっと、抑制してくれていたのだとしたら?
じっと見つめてくる真っすぐな目に、望まれていることはひしひしと伝わる。
今はそれをぐっと抑えてくれていることも。
僕にとっては、自分の気持ちを認めることだけでも勇気がいった。
これまで自分を守ってきた殻に、自ら皹を入れるようなものだった。
ここまで進めたのだから、あともう一歩進みなさいと、強請られているような気分だ。
……くそっ。
意思の示し方は、言葉にするより簡単だ。
ただ、瞼を閉じるだけ。
そんな風に決めたところに少しだけ、陽介さんの狡さを感じた。
それが少し可愛いと思えたから、拒否することはできなかった。
最初のコメントを投稿しよう!