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男というのは、一般的にああいう子が好みだろうなと見ていて思った。
だけど陽介さんは、僕を好きだと言う。
信じてくれと、真摯な言葉で訴えてくれたことを忘れたわけじゃない。
その言葉に、僕はまだ一度も応えていないというのに、ショックを受けた自分も嫌だ。
独占欲ばかり一人前に成長して、僕は一体何がしたいんだろう。
テーブル席とカウンターテーブルをダスターで綺麗に拭いて、カウンターに戻ってくると、流し台に汚れたダスターを投げ出した。
その動作が、荒っぽく見えたのだろうか、また佑さんが癇に障る笑い方をした。
「んなに陽介を独り占めしたいなら、いい加減応えてやればいいのに」
「別に僕は、独り占めなんか」
「まー、俺は見てておもろいからなんでもいいけどな」
出た、最低発言。
言い返そうと思っても、佑さんに言葉で勝てた試しがないので舌打ちだけして黙り込む。
「うだうだしてるうちに、横から持ってかれても知らねーぞ」
「だから、僕はそれならそれで」
「まこと」
言葉を遮るように佑さんに名前を呼ばれ、仏頂面で隣を見ると……てっきり厭味な顔で笑っていると思っていたのに、思いのほか優しい苦笑いで立っていた。
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