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佑さんの声は淡々としていて、だから余計に、脳内にこびりつく。
話している間も、至近距離で真っ黒い二つの目が僕を射抜いていた。
逸らしたいような、逸らしてはいけないような。
頭の中が静かに混乱させられたまま、佑さんの言葉が続く。
「元、だしな。過去のしがらみ越えんのも、やぶさかではねえよ。そう思うくらいには、お前はいい女だ」
「ゆう……さ、」
絞り出した声は、緊張して擦れていた。
漸く重たい足が動いて、一歩後ろへ下がったけれど、距離が変わらない。
同じだけ、佑さんが詰め寄るから。
「後は、お前だ。お前は誰と、この距離で居たい?」
その声が、急に艶めいた気がした。
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