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あれほど抵抗力を失っていた身体に、ぐっと力が入る。
胸の奥から沸いた焼け付くような嫌悪感が、陽介さんとあの子に向けられたものなのか佑さんに向けられたものなのかはわからないが。
矛先は、目の前にいる佑さんに向けられた。
次の瞬間、「げふっ」とまるで何かを嘔吐するような声を上げて佑さんが前屈みに腰を折る。
僕は顔を背けて避け、目に付いた休憩用の丸椅子に手を伸ばした。
「げほっ……お前、俺は答えを出せって言ったんであって、拳を出せとは…」
「……悪い。距離が近すぎて上手く鳩尾に入らなかった」
「ちょっ、待て待て! 揶揄って悪かった、そんなもん振り上げるなお願い降ろして」
「……っ! やっぱり揶揄ってたのか!」
丸椅子を振り上げたのはさすがにただの脅しのつもりだったが、本気でそのまま振り下ろしてやりたくなった。
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