469人が本棚に入れています
本棚に追加
「……あの」
「はい」
「………彼女とはいつも、あんな話し方なんですか」
むすっ、どころか、ぶっすーってくらいの仏頂面で、ようやく聞けた言葉は、やっぱり俺が思いもよらないとこだった。
いや、気付かないといけなかったのかも。
「あー……そう、すね。元が同期の仲間内からだったんで、ずっとあんなノリで」
「確かに、友人なんだなっていうのは伝わりました」
「それでも気安くしすぎっすね、すんません」
「……別に、聞いてみたかっただけですから」
本当に泣きたいくらいに嫌だったのか、それとも無理やり言わされたせいなのか、真っ赤なしかめっ面をしてるのが堪らなく可愛くて、ゆっくりと頭を抱き寄せる。
こつ、と慎さんの額が肩に当たり、そのまま背中で両手を組んだ。
「気を付けます。それに俺からは連絡しないし」
「そうなんですか」
「そうなんです」
そりゃ嫌だよな。
俺だってあんな馴れ馴れしく男と慎さんが話してたら、めちゃくちゃヤキモチ妬くと思うし、正直佑さんにだってたまに妬くし。
気を付けないと。
腕の中の慎さんの頭から、シャンプーの香りがする。
きっとまだ、真っ赤な顔をしてるんだろうなと思ったら頬擦りしたくなったけど、ちょうどそのタイミングで慎さんが居心地悪そうに身動ぎをした。
「……ミステリー、クライマックスですね」
「あ、ほんとだ。面白かったですか?」
「……帰ってから、もっかい観ます」
最初のコメントを投稿しよう!