僕と、勝負してください

6/37
前へ
/37ページ
次へ
正直言うと、俺は少し期待した。 ―――話したいことが、あります もうそろそろ、彼女の方から話してくれるんじゃないかって。 慎さんから感じる好意は、気のせいじゃないだろう。 そう思ってもいいよな? いいだろ? なんだかんだ、大人しく手を繋がれてたり 恥ずかしそうに頬を染めたり ヤキモチ妬いたり 彼女の表情全部が、「そう」だと言ってる気がするのに声では聞けない。 本当は早く聞きたい。 確かめたい。 だけど結局、この日最後までその話は出なかった。 彼女を送り届けて、佑さんに一杯だけ酒を奢ってもらって、その帰り道。 晴れた夜空に、白い息が上って消えた。 「……せめて、気持ちだけでも」 焦がれて焦がれて、苦しいくらいに、貴女で頭がいっぱいです。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

469人が本棚に入れています
本棚に追加