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まだ少し、終わってしまうには寂しかった。
「何か、話しますか?」
モヒートのグラスには口を付けないままそう提案したのは、あと少し、勝たずに居たかったから。
陽介さんは、少し息苦しそうにしながらも、前屈みの姿勢で小さく頷いたように見えた。
「一度聞いてみたかったんです。貴方は僕の何がそんなに好きなのか」
素面の時に聞くのは、なんだか気恥ずかしいけれど、今なら聞いても大丈夫な気がした。
もしかしたら、彼は忘れるかもしれないし。
最後の機会になるのだろうし。
だって、僕は負けないから。
「正直僕は、すごくめんどくさい人間だという自覚はあるんですよね」
「そなんですよ、そこもすごく可愛いすよね」
「……」
てっきり、べろべろで呂律の回らない返事が返ってくるかと思ってたが。
いやにはっきりとした声で、僕をめんどくさいと認めやがった。
ついさっきまで、今にも潰れそうだったくせに!
なんだそれは!
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