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「どんな顔も、好きだけど、泣いてほしく、ないなあと、思う」
どんな顔も好き、だなんて。
すごい、殺し文句だ。
彼の「好き」はいつだって真っすぐだった。
今だって、そう。
僕の無茶振りに付き合わされて、勝敗が決まってることはある程度予測していただろうに。
背を向けずに真正面から、受け止めてくれた。
限界なんて、とっくに超えてた、きっと。
「……ごめん」
テーブルに突っ伏した彼に、堪らず出た声は涙声だった。
薄らと目を開けた彼が、ぼやけた目で僕を見る。
「ごめん。陽介さん、ごめん」
こんな無茶な酔わせ方をして。
貴方は黙って最後まで付き合ってくれる、優しい人だって僕はわかっててやったんだ。
僕は貴方に、ずっと甘えてた。
「まこと、さん」
こんな酷いことをしている僕を
気遣うような声で、名前を呼ぶ。
ごめん、とまた謝りかけた、声が止まった。
ゆっくり持ち上げられた手が、僕に向かってまっすぐ伸びて
僕の頬を撫でて、優しく涙を拭い。
暖かい指が力なく落ちて、彼は意識を飛ばした。
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