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「でも、あんな一方的な脅しみたいな勝負……」
「そんなに気になるなら、「ありがとう」つってチューの一つもしてやれ」
「は……」
にたぁっと笑ったあと、唇を窄めてなんとも下品な顔をする。
「鼻血出して喜ぶぞ」
「……な、僕から、そんなっ」
「卒倒するかも」
うひひひ、と嫌な笑い声を残して佑さんは帰って行った。
キス……僕から?
出来るわけないって絶対わかってていってるあのオヤジ!
それなら、折半を申し出る方が可愛げはないかもしれないが気が楽だ。
かっこつけさせてやれ、と佑さんは言ったけれど、あの勝負は僕の一方的なものだったのにやっぱりそんなわけにはいかない。
今日で仕事納めだと言っていたから、きっと何も言わなくても夜には来るだろう。
明日は、遊園地の約束の日だし。
来たら話をしよう、そう思っていたのに。
何故かその日は、「明日、迎えに行きますね」とメッセージが一つ入っただけで、陽介さんはちらりとも顔を出さなかった。
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