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小言の相手がその調子では毒気も抜かれるというもので、手を握られたまま離れることもできず、そのまま枕元の床に腰を下ろした。
「暫く、居てくれるんすか」
「そうですね。後でキッチンを借りてもいいですか」
「キッチンでもなんでも。暇になったらDVDも結構並んでるんで自由に見てください」
言いながら、握った僕の手を指でさらさらと撫でている。
これが、すごく、くすぐったいのだ。
手が、じゃなくて。
気持ちが。
「良かったんすか」
「何がですか?」
「妹に。俺は別に、なんて思われても気にならない性質だし、慎さん無理しなくて男で通してて良かったのに」
「いくらなんでも、そんなわけには……」
「俺にはちゃんと女の子だし、それで充分なのに」
「……」
ぼぼぼっ、と顔に熱が集まったのは、陽介さんにも見られただろうか。
薄暗がりだから、バレなかったと思いたい。
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