貴女が涙を飲んだワケ

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「熱は?!」 と言いながら、いきなり俺の額に手を押し当てる。 俺は正座したままそれを受けて、ついへらっと顔が緩んだ。 「下がったみたいっす」 「……ほんとですね。でもちゃんと測らないと」 「大丈夫ですって。これで遊園地行けますね」 「病み上がりで何言ってんですか。まさか朝になったら行こうとか思ってないでしょうね」 え……、と言葉に詰まった俺を、慎さんが呆れた顔で見下ろす。 まじでそのつもりでした俺。 「だめですよ、いくらなんでも。昨日は何も食べてないんだし、せめて数日身体休めてから……」 「あ。あのお粥食べたい。俺の為に作ってくれたんすよね?」 キッチンの方を指差しながらそう言うと、慎さんも「ああ」と思い出したように視線を向ける。 「温めてきます。食べれそうですか」 「めっちゃ食べれます。やった、慎さんの初手料理だ」 「いや……ただのお粥ですけどね」
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