貴女が涙を飲んだワケ

15/33
前へ
/33ページ
次へ
「あ、俺が寝てる時?」 「そう。佑さんが、姉と娘に会いに昨日から戻ってて、余計な事をいいやがって」 「はあ」 話しが見えなくて、相槌を打ちながらお粥を口に運ぶ。 慎さんの口調からして、どうやら佑さんに腹を立てているらしいが、一体何があったというのか。 彼女が一瞬口籠ったのをそのまま見守っていると、少し頬を染めて言いにくそうに口を開いた。 「ぼ……僕に、彼氏が出来たと。姉と両親に言ったらしくて。それ聞いて速攻電話かけてきて、姉はどんな男だとガンガン聞いて来るし、母親は本当に彼氏か、まさか彼女だったりしないかとか」 「ぶっ! 彼女て。容赦ないすねお母さん」 「悪気はないんですけどね。底抜けに明るい家族で裏表がないというか、なんでもストレートにぐいぐい来る……ので……」 そこまで話して、慎さんが呆けたように俺の顔を見る。 「なんすか」 「いえ、なんでも……」 言いながら彼女は頬を引き攣らせて笑いながら目を逸らし、俺は意味がわからず首を傾げる。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

505人が本棚に入れています
本棚に追加