貴女が涙を飲んだワケ

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遊園地を目の前に、まさか子供の頃以来の三十九度なんて高熱を出すことになるとは思わなかった。 「明日迎えに行きます」というメッセージを送ったのは、慎さんに知られたら「馬鹿言わないで寝てなさい」と言われて遊園地が流れてしまいそうだったから。 本気で気合で治すつもりでいた。 だってほら、熱出ても一日寝たら治りました、なんて結構ある話だろう。 結局、残念ながらそんな上手い展開にはならず、解熱剤で一時的に下がっても朝になればまた熱が上がり、遊園地は敢無くキャンセルとなったのだが。 なんと! あの、照れ屋の慎さんが! 看病に来てくれるなんて! 全く思ってなかったと言えば嘘になるけど電話越しの声が怒ってたから、期待はしてなかった。 遊園地は延期になったが、熱を出して良かったとさえ思える出来事だ。 しかも、俺の真似をしただけだと顔を真っ赤にしてむすっとしていたけれど。 手に、キスをしてくれた。 慎さんからの、初めてのキスだった。
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