貴女が涙を飲んだワケ

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初めてきいたあぁあ! と、感動している暇もなく。 「お、陽介来たな。あけおめー」 これが四十手前のおっさんの挨拶か、と突っ込みどころ満載の佑さんの声で、一斉に俺に視線が向けられた。 特に一際攻撃的な視線が飛んできたのが、小学生の佑衣ちゃんなのはなぜだ。 あ、やべ。 と、視線が集中するとさすがに緊張したが、佑さんの「あけおめ」が余りに軽かったのを思い出して気が抜けた。 「高見陽介です。慎さんとお付き合いさせてもらってます」 お母さん相手にまず頭を下げると「まあまあまあ」と腕を取られて中へ促される。 「娘がお世話になってます。とりあえず、入り。お父さん奥におるから」 おお、速攻でラスボスの間だ。 気合入れねば、と靴を脱ぎながら隣の慎さんに目を向けると。 「……どしたんすか?」 「や……別に」 物凄い、真っ赤な顔で俯いていた。
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