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「あー、真琴さんが酒強いのってだからっすか!」
「そうちゃうかなー。毎日晩酌付き合わせてたからな、高校生んときから。その頃は一日一杯程度やったのにいつの間にか酒豪になりやがって」
お父さんは、髪と目の色は真琴さんと同じだけれどもっと日本人離れした顔立ちだった。
聞けば父親、つまり真琴さんの祖父に当たる人がロシア人だったとか。
けどお父さんは生まれも育ちも日本で、言葉も関西弁だし英語もロシア語も話せないと言う。
そしてこっちが戸惑うくらい気さくな人物で、一時間も経たないうちに男三人で酒盛りとなったのである。
「陽介も結構飲むんですけどね。真琴と飲み比べやってこてんぱんに潰されてやんの」
「飲み比べ?! コイツと?! ようやるわ」
「まさかあんな強いと思わなくて……でもいいんす、そのおかげで付き合えるようになったので」
酔いから目が覚めた時、真琴さんが最後のグラスを飲まなかったと聞いた時のあの感動を思い出してつい口元がだらしなくなってくる。
「え、どういうことやねん」
「陽介が勝ったら付き合うっていう条件で、真琴が最後わざと飲まなかったんですよ」
「うわ、なんやそれ。わが娘ながらめんどくさ……」
「もういいだろその時の話は!」
隣に座って黙って聞いていた真琴さんだったが、あの時の話になると顔を真っ赤にして怒った。
その膝は、佑衣ちゃんがしっかり陣取っていて、じろじろとさっきから俺を睨んでいる。
どうやら俺は、このちびっこに敵対視されているらしい。
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